乗馬で何をするのかによって、適した用具が変わりますが、最もサイズが大きい変化は鞍(くら)になります。鞍は英語でsaddle(サドル)です。
形状が大きく変わる為、色々な競技で使われる鞍の種類を解説していきますが、ここでは1つ1つを深掘りするのではなく、より多くの種類を取り上げます。
外からは分かりにくいですが、鞍の中には鞍骨(あんこつ、英語ではsaddle tree:サドルツリー)という骨格があり、それぞれ構造(形状)が違うので乗り心地が変わります。
※エンデュランス競技用等、極一部には鞍骨がないtreeless saddle(ツリーレスサドル)タイプも存在します。
ブリティッシュ馬術競技用の鞍
鞍骨

鞍の名称(名前)
細かく各名称がありますが、ここでは必要最小限だけ解説します。

1、前橋(ぜんきょう、pommel:ポメル)
2、座面(ざめん、seat:シート)
一番深いと部分を、鞍つぼ(くらつぼ)と呼びます。
3、後橋(こうきょう、cantle:キャントル)
4、小あおり革(しょうあおりがわ:skirt:スカート)
5、膝当て(ひざあて、knee roll:ニーロール、knee pad:ニーパッド)
6、あおり革(あおりがわ、flap:フラップ)
通常は2枚構成で、1枚めくると腹帯(はらおび)を通す、ベルトが付いています。
※1枚革で作られるmonoflap(モノフラップ)タイプもあり、より軽量でより馬体に足が密着しますが、より高価格になります。
7、鞍褥(あんじょく、panel:パネル)
鞍の下のクッション部分で、馬の背中を保護します。

8、腹帯立託革(はらおびたっかく、billet straps:ビレットストラップ)
9、尾錠(美錠)保護革(びじょうほごがわ、buckle guard:バックルガード)
馬場鞍(ばばぐら)

英語ではdressage saddle(ドレッサージュサドル)。
座ったまま演技を行う馬場馬術競技(ばばばじゅつ)向けで、座る部分が深く、後橋が高くなっており、脚をまっすぐ下ろしやすくする為、あおり革と膝当ても縦に長くなっています。
※重さ:約5~8㎏程度
障害鞍(しょうがいあん)

英語ではjumping saddle(ジャンピングサドル)。
障害馬術(しょうがいばじゅつ、障害飛越:しょうがいひえつ)向けで、座る部分が浅く、後橋が低くなっており、お尻を鞍から浮かせるツーポイント乗りや、前傾姿勢が取りやすいように、あおり革と膝当てが前方にせり出し、縦に短くなっています。
※重さ:約4~6㎏程度
総合鞍(そうごうあん)

英語ではall purpose saddles(オールパーパスサドル)。
馬場鞍と障害鞍の中間に近い造りで、屋外での騎乗にも対応する万能型です。
※重さ:約5~7㎏程度
サドルシート競技用の鞍
鞍の名称(名前)

1、前橋(ぜんきょう、cutback pommel:カットバックポメル)
2、座面
3、後橋
4、小あおり革
5、あおり革
通常は2枚構成で、1枚めくると腹帯(はらおび)を通す、ベルトが付いています。
6、鞍褥
cutback saddle(カットバックサドル)

サドルシート競技向けで、馬が高い首の位置を保ち、肩を大きく動かせるようにする為、前橋は盛り上がるのではなく、U字型に大きく削られ、座る部分は浅く平らで、あおり革にクッション(膝当て)がないのが特徴です。
サドルシート・ファイブゲイテッドにも使用されます。
※重さ:約5~7.5㎏程度
ウエスタン馬術競技用の鞍
鞍骨

鞍の名称(名前)
細かく各名称がありますが、ここでは必要最小限だけ解説します。

1、hoen(ホーン)
前方に付いている突起で、投げ縄(ロープ)を引っ掛ける為のものが、現在は持ち手として使われています。
2、pommel(ポメル)、swell(スウェル)
ホーンを支える部分で、左右に膨らんでいます。
3、seat(シート)
4、cantle(キャントル)
5、jokey seat(ジョッキーシート、jokey:ジョッキー)
6、strap holser(ストラップホルダー)
latigo keeper(ラティゴキーパー:馬の左側につける場合の名前)、billet keeper(ビレットキーパー:馬の右側につける場合の名前)、cinch strap horder(シンチストラップホルダー:シンチは腹帯の事)等と呼ばれますが、余ったストラップを収納する為、前方に取り付けられています。
7、front rigging d ring(フロントリギングディーリング、front rigging dee:フロントリギングディー)
8、off side billet(オフサイドビレット、off billet:オフビレット)
ウエスタンサドルの右側(馬の右側をオフサイドと呼ぶ)にある革ストラップで、フロントリギングディーリングからシンチを取り付けます。
9、latigo(ラティゴ)
ウエスタンサドルの左側にある革ストラップで、フロントリギングディーリングからシンチを取り付けます。
10、fender(フェンダー)
11、hobble strap(ホブルストラップ)
12、stirrup(スターラプ)
13、rear rigging d ring(リアリギングディーリング、rear rigging dee:リアリギングディー)
14、back billet(バックビレット、rear cinch strap:リアシンチストラップ)
バックシンチ(後腹帯)を取り付けます。
15、back housing(バックハウジング、rear housing:リアハウジング)
キャントルの後ろ部分で、下の方はスカートと呼ばれます。
16、skirt(スカート)
17、concho(コンチョ)
紐を固定したりするボタン。
18、saddle strings(サドルストリングス)
all around saddle(オールラウンドサドル)

複数の種目をこなせるように、クッション性のあるシート、ローピングにも耐えられるように丈夫で高めのホーン等、バランス重視が特徴です。
※重さ:約11~18㎏程度
reining saddle(レイニングサドル)

レイニング向けで、手綱の動きを妨げないようホーンが低く、シートはより平らに近く、馬との密着性を高めているのが特徴で、reiner saddle(レイナーサドル)とも呼ばれます。
※重さ:約13~18㎏程度(より軽量なモデルもある)
cutting saddle(カッティングサドル)

カッティング向けで、ホーンとポメルが高く、シートは平らでキャントルは低く、スカートが長いのが特徴です。
滑りにくくする為にジョッキーシートやフェンダーが、革の裏面を起毛させて表面に使用したroughout(ラフアウト)仕様もあります。チームペニング、ランチソーティングにも使用されます。
※重さ:約13~17㎏程度
mounted shooting saddle(マウンテッドシューティングサドル)

マウンテッドシューティング向けで、射撃時の銃や手の動きを妨げないようホーンは低く前傾し、シートは深く、スエードやラフアウト(フェンダーも含む)仕様もあります。
キャントルは高く、スカートは短い、軽量が特徴です。
※重さ:約11~15㎏程度
barrel racing saddle(バレルレーシングサドル)

バレルレーシング向けで、急旋回と急加速に対応する為、高く細くて掴みやすいホーン、シートは深くスエード仕様もあり、キャントルは高く、スカートは短い、小型軽量が特徴です。
※重さ:約11~13㎏程度(より軽量なモデルもある)
ドマ・ヴァケラ競技用の鞍
fuste(フステ)

鞍の名称(名前)

1、perilla(ペリーヤ)
先端中央の突起部分。
2、borrén(ボレン)
mixta(ミクスタ)タイプのみに付いている幅の広い隆起で、安全性を高めます。
3、asiento(アシエント)
4、concha(コンチャ)
5、manta estribera(マンタエストリベーラ)
ペリーヤの前に掛ける、縞模様のウールまたは綿で作られた、伝統的な飾り毛布。
6、zalea(サレア)
表面を覆う天然羊毛で、クッション性を高め、滑り止めの役目も。
7、agujetas(アグヘータス)
サレアを鞍へ固定する為の革紐。
8、agarrador(アガラドール)
乗時の補助として使われる、革製の編み込みボールエンドストラップ。
9、baticola(バティコラ)
鞍が前方にズレないよう、馬の尾の付け根に通して固定するストラップ。
10、acción(アクシオン)
11、estribo(エストリボ)
黒く塗られた、箱型の鉄製鐙(あぶみ)。
montura vaquera mixta(モントゥーラ・ヴァケラ・ミクスタ)

ドマ・ヴァケラ向けで、前方にボレンと呼ばれる隆起があり、急旋回・急加速・急停止時に、しっかり支えてくれるのが特徴です。
※重さ:約8~12㎏程度
日本式の鞍(和鞍)
鞍橋(くらぼね)

1、前輪(まえわ)
2、居木(いぎ)
3、後輪(しずわ)
鞍の名称(名前)
細かく各名称がありますが、ここでは必要最小限だけ解説します。

1、馬氈(ばせん)
座る部分である居木の上に敷く、布や革で作られた鞍敷(くらしき)。
2、力革(ちからがわ)
馬氈と居木の穴を通し、鞍と鐙(あぶみ)を繋ぎます。
3、肌付(はだつけ)、4、切付(きっつけ)
肌着けを馬の背に乗せ、その上に切付を乗せ、その上に鞍を乗せます。
5、障泥(あおり)
脇腹に垂らし、汗や泥が衣服に跳ねるのを防ぎます。
6、四緒手(しおで)
障泥等の緒を結びつけるところ。
7、舌長鐙(したながあぶみ)
流鏑馬(やぶさめ)、笠懸(かさがけ)、スポーツ流鏑馬、馬上武芸、打毬(だきゅう)にも使用されます。
※重さ:約10~14㎏程度
エスカラムサ競技用の横乗り鞍
fuste(フステ)

1、capete(カペテ)
鞍の名称(名前)
エスカラムサ競技用の横乗り鞍(サイドサドル)は、albarda(アルバルダ)と呼ばれ、右脚を固定するU字型のcuernos(クエルノス:角)と、左脚を支えるC型のクエルノスが特徴。

1、pico(ピコ)
右脚を乗せて固定するU型のクエルノス。
2、cuna(クナ)
左脚が外側に滑るのを防いで支える、C型のクエルノス。
3、asiento(アシエント)
4、enreatado(エンレアタード)
カペテの根元に巻かれた革。
5、argolla(アルゴーヤ)
鞍とエンレアタード等を繋ぐ為のリング。
6、contralatigo(コントララティゴ))
cincho(シンチョ:腹帯)を繋ぐ革で、馬の右側の方につける名前。馬の左側につける名前はラティゴ。
7、arción(アルシオン)
8、estribo(エストリボ)
エスカラムサでは左側に1つだけ付いている鐙。
9、basto(バスト)
馬の背中に直接あたる部分。
10、cuartero(クアルテロ)
アシエントの後ろの革。
11、chapetones(チャペトネス)
革を固定したり、装飾したりするために取り付けられる、円盤状の飾り金具
12、tientos(ティエントス)
細長い革紐で、パーツを留めたり、装飾の役割もあります。
※重さ:約10~15㎏程度
エンデュランス競技用の鞍
エンデュランス競技向けの鞍は、大きく3つのタイプに分かれます。
1、ブリティッシュ競技用をベースにしたタイプ
2、ウエスタン競技用をベースにしたタイプ
3、鞍骨(saddle tree)がないツリーレスタイプ
エンデュランス用ブリティッシュスタイル鞍
座る部分が深く、後橋が高くなっており、脚をまっすぐ下ろしやすい構造になっていて、クッション性の高いシートが特徴。
鞍の名称(名前)

1、前橋
2、座面
3、後橋
4、Dカン(d ring:ディーリング)
サドルバッグ、水筒等を固定するD型の金具。
5、小あおり革
6、膝当て
7、あおり革
通常は2枚構成で、1枚めくると腹帯(はらおび)を通す、ベルトが付いています。
※1枚革で作られるmonoflap(モノフラップ)タイプもあり、より軽量でより馬体に足が密着しますが、より高価格になります。
8、太もも・ふくらはぎサポート
thigh block:サイブロック、calf block:カーフブロック、rear block:リアブロックと呼ばれ、位置をマジックテープ等で微調整したり、取り外したり可能な仕様が多く採用されています。
9、鞍褥
※重さ:約4.5~7㎏程度
エンデュランス用ウエスタンスタイル鞍(ホーンレス)
座る部分が深く、スカートが短く、クッション性の高いシートで軽量が特徴。
鞍の名称(名前)

1、pommel、swell
2、seat
3、cantle
4、jokey seat
5、fender(めくるとシンチをつけるrigging:リギングがあります)
6、hobble strap
7、stirrup
8、skirt
9、d ring
※重さ:約7~10㎏程度
エンデュランス用ツリーレスタイプ鞍

木や合成樹脂製の硬い芯材で作られる、鞍骨(saddle tree)がなく、馬の肩の動きを邪魔しません。座る部分が広く、後橋が高くなっており、クッション性の高いシートで超軽量が特徴。
※重さ:約2~4㎏程度
ポロ競技用の鞍
ポロ向けで、打球の邪魔をしないよう膝当てがなく、あおり革は長く薄く、急旋回・急停止や衝突に耐えられるよう、鞍骨が強固に作られているのが特徴。
滑りにくくする為に、あおり革や騎座がスエードやラフアウト仕様になったものもあります。
鞍が横滑りしないよう、鞍全体と馬体を一周させて締める、オーバーガース(overgirth)を使います。
鞍の名称(名前)

1、前橋
2、座面
3、後橋
4、小あおり革
5、あおり革(あおりがわ、flap:フラップ)
通常は2枚構成で、1枚めくると腹帯(はらおび)を通す、ベルトが付いています。
6、overgirth slit(オーバーガーススリット)
7、鞍褥
※重さ:約5~9㎏程度
ホースボール競技用の鞍
ホースボール向けで、急停止やタックルの際に身体を支える為、あおり革の前後にパッドがあり、1枚革で作られるmonoflap(モノフラップ)タイプが多いのが特徴。
鞍が回転しないよう鐙同士を腹の下で繋ぐベルト、フランス語でsangle de ramassage:サングル ドゥ ラマサージュ(英語でpickup strap:ピックアップストラップ)を使います。
鞍の名称(名前)

細かく各名称がありますが、ここでは必要最小限だけ解説します。
1、前橋
2、座面
3、後橋
4、小あおり革
5、膝当て
6、あおり革(あおりがわ、flap:フラップ)
7、太もも・ふくらはぎサポート
8、鞍褥
※重さ:約5~6㎏程度
競馬用のレース鞍

ほぼシートに座らない為、極限まで薄く、超軽量が特徴です。
※重さ:約1㎏程度
